2017年2月14日火曜日

財布がなくなった事件、多発-その3

警察署から戻った母マウスキーは、心身ともに疲れきっていた。

財布が盗られたのだから、それは仕方がない。

そんな緊迫と疲労がピークに達した、その時である──。

何ともバツが悪そうな顔をした母マウスキーが、片手に黄色の長財布を持ち、家族の前に現れたのだ。

!?

一体、何が起こったのか理解する前に、母マウスキーが「財布が見つかった」と報告した。

そう、母マウスキーは、財布を落としてはいなかったし、ましてや盗られてなどいなかったのである!

そんな驚きと共に、昔の記憶がデジャヴのように脳裏に蘇ってきた。

その在りし日の母マウスキーは、やっぱり財布を落としたと言い、家族みんなで大騒ぎになったのである。
それは、もう、どん底貧乏の底の底の光景のように、重苦しく、息も絶え絶えな様子であった。

財布にはクレジットカードも入っていたので、急いでカード会社に連絡したりなどもしていたし、当然大急ぎで警察にも届け出に行った。

そんな数時間後──そう、予想している通りの結末である。

財布は、落としていなかった。

申し訳なさそうな顔をした母マウスキーが、やっぱり財布を持って、「家にあった」と言うのだ!

それと同じ事が今回も起こったのである。

だが、母マウスキーは今回のうっかり事件では、前回の事を教訓として学んでいたようだ。

「落としてもいいように財布の中身は少なめにして、クレジットカードも入ってない」とのこと。

なんと、母マウスキーは学んだ事として、落としてもいい財布作りをしていたのだ!

こんな驚きと共に、今回の事件はあっけなく幕を閉じたのだが、実は年末に再び同じような事があった。

「財布を落とした」と、いうのである。

今回、教訓を学んだのはマウスキー達となった。

「本当に落としているのかどうか、ちゃんと探したほうがいい。警察に言うのは、それからだ」

そして、今回もやっぱり財布は車中から見つかったのである。

更にマウスキーは確信する。

これからも、母マウスキーが財布が見当たらない時に「落とした」と言って、やっぱり家族が慌てふためき続けるであろう事を。


おしまい。

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